2010.8.22 News / 芦安山岳館 /

【連載】南アルプス 自然と人[15]

世界遺産めざして活動 手つかずの財産、次世代へ

南アルプスを世界遺産に-。山梨、長野、静岡の関係市町村でつくる南アルプス世界自然遺産登録推進協議会による登録に向けた取り組みは4年目を迎えた。登録実現に向けた学術的価値の集積など、地元自治体や山岳関係者の努力が続いている。

3000メートル級の山々が連なる南アルプス。美しい自然を後世に残すため世界自然遺産登録に向けた取り組みが進む=山日YBSヘリ「ニュースカイ」(NEWSKY)から

3000メートル級の山々が連なる南アルプス。美しい自然を後世に残すため世界自然遺産登録に向けた取り組みが進む=山日YBSヘリ「ニュースカイ」(NEWSKY)から

南アルプスは2003年、国の検討会による世界自然遺産の候補地選定から富士山とともに落選。景観や植生が近隣地域にも見られることなどが影響したとみられている。その後、富士山は山梨、静岡両県が連携して文化遺産登録に動き出した。南アルプスでは07年に同協議会が発足し、登録に向けての本格的活動が再び動きだした。

人類共通の財産として世界中の人々が共有し、次世代へ受け継いでいく世界遺産。南アルプスが世界自然遺産になれば、雄大な自然を保護する上で願ってもない“称号”となる。

一方で、遺産登録には課題も多い。「仮に登録となれば、先進事例から見てもオーバーユースとなるのは明らか。世界遺産を目指す側として、登録後のことも視野に取り組まなければならない」。こう話すのは同推進協事務局を務める南アルプス市みどり自然課の広瀬和弘さん。鹿児島県・屋久島は1993年の世界自然遺産登録を契機に観光客が急増。環境悪化が指摘される一因とされている。

今沢忠文南アルプス市長は登録を目指す自治体の首長として、さらには「一市民として」と前置きした上で次のように話す。「南アルプスを抱えるわれわれ地域住民は、貴重な自然資源を子どもや孫の代までつないでいく責任がある。世界遺産への取り組みによってその魅力が伝わると同時に、自然保護の大切さを認識する機会にしたい」

手つかずの自然や多種多様な動植物があり、美しい景観が人々を魅了する南アルプス。“自然と人”は共生の道を模索し、歩み続ける。 (おわり)

2010年8月22日付 山梨日日新聞掲載

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