リニア評価書提出 県内沿線住民は… 騒音予測「まだ不十分」 残土置き場にも不安の声

 JR東海がリニア中央新幹線(東京・品川-名古屋間)の環境影響評価(アセスメント)書を国土交通相に提出した23日、JR東海の担当者が「分かりやすく充実した評価書ができた」と自信を見せる一方、沿線住民からは騒音の予測調査地点の不足や、残土置き場が決まらない状況に不安の声が上がった。リニア中央新幹線は秋ごろ着工する見通し。懸念が消えない「地元」は、JR側に丁寧な説明を続けるよう求めている。

■騒 音

 横内正明知事は3月にアセス準備書に対する知事意見をJR東海に提出。列車の走行による騒音影響を予測する調査地点に新たに14カ所の追加を求めたが、評価書では5カ所にとどまった。

 リニア中央新幹線と新山梨環状道路に挟まれる中央市の住民からは騒音の予測地点に加えるよう求める声が強かったが、JR側は「新幹線建設では指摘のような調査はしていない。道路の音と列車の音は評価基準が違う」として応じなかった。

 対象地域に住む中央市布施の60代男性は「意見聴取はパフォーマンスだったとしか思えない。安心できる生活環境を保証する姿勢を見せてほしい」と不満を漏らした。

■残 土

 リニア中央新幹線工事では南アルプスを貫通するトンネル建設で、早川町側からだけでも約325万立方メートルの建設残土が搬出される見込み。知事意見では残土の処理方法の評価書記載を求めたが、処理量を明示したのは同町大原野の残土置き場へ搬入する4.1万立方メートルだけだった。

 評価書では、県が整備する南アルプス市芦安地区-同町奈良田を結ぶ道路への利用方針は示したが、同町の辻一幸町長は「大部分の使途が決まっていない。町で残土を使うにしてもJRから相談がない。具体的な使い道を示すべきだ」と注文を付ける。

■エコパーク

 トンネルを通す南アルプスは、地元自治体が国連教育科学文化機関(ユネスコ)生物圏保存地域(エコパーク)への登録を目指している。知事意見は地元と定期的に情報共有する機会を設けるように求め、JR東海も「関係する行政機関に必要な情報提供を行う」と応じた。

 南アルプス市の広瀬和弘ユネスコエコパーク推進担当は「トンネル建設が自然環境に影響を与える懸念はある。JRに最大限の配慮を求め、情報を共有して一緒に保全に取り組みたい」と話した。

 一方、リニア建設に反対する市民団体は「知事意見が反映されたとは思えない。アセスが形式的な手続きになっている」(川村晃生代表)と批判した。

 (2014年4月24日付 山梨日日新聞)

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