リニア「南アの生態に影響」世界遺産推進協 JRに配慮要望へ

 南アルプスの世界自然遺産登録を目指す南アルプス世界自然遺産登録推進協議会で、自然景観や生態系など学術的価値を調べている南アルプス総合学術検討委員会(佐藤博明委員長)は21日、JR東海に対し、自然景観などに配慮した工事を求めることを決めた。この日開かれた検討委で委員から、景観や動物の生態系に悪影響が出るという意見が相次いだ。

 検討委はリニア中央新幹線の環境影響評価準備書が公開されたことを受け、南アルプス市役所で行われた。山梨、長野、静岡の3県から、検討委のメンバーである専門家ら17人が出席した。

 委員は「甲府盆地から見た南アルプスの景観を阻害する」「ニホンイヌワシやアカイシサンショウウオへの影響が大きい」などと懸念。植物については「もともと人工的に植林された地域を通るため、影響は少ない」とした。

 一方準備書について「工事の内容が分からない」「残土置き場の場所によって環境への影響が変わる」などの意見が相次ぎ、工事内容の詳細を質問することにした。委員の一人は「準備書前段階の方法書が公開された際にも検討委として意見したが、準備書にはほとんど反映されていない」とし、JR東海の対応を疑問視した。

 会議後、佐藤委員長は「準備書は詳細な内容が書かれていないため、どのような影響が出るか分からず、懸念は大きい。南アルプスの価値をできるだけ損なわないような工事を求めていきたい」と話した。検討委は委員の意見をとりまとめ、11月5日までにJR東海に対し意見書を提出する。

 (山梨日日新聞 2013年10月22日付)

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