夜叉神峠の林道復元 周遊ルートに活用期待一橋大山岳部OB会、南アに“恩返し整備”
一橋大山岳部OB会の「針葉樹会」(竹中彰会長)が、1950年代まで地元住民が作業用に使っていた夜叉神峠=南アルプス市芦安芦倉=の林道を登山道として整備し“復活”させた。芦安地区の住民は、林業の衰退に伴い荒廃が進み、通行できなくなっていた道の再生を歓迎。「かつて地域の産業を支えた道が復元されてうれしい」との声が上がり、登山者の周遊ルートとして活用することを期待している。
同大山岳部は、前身の東京商科大だった1900年代初頭から旧芦安村を拠点にして南アルプス・北岳に通い、同村の山岳ガイドの協力を得て登山をしている。36年には、同大一橋山岳部の小谷部全助らが、同村の山岳ガイドと一緒に北岳バットレスの冬季初登攀(とうはん)を成し遂げている。
南アルプスの登山史などを記した書籍を収蔵する南アルプス市芦安山岳館と同会が、会の活動記録などを掲載した会誌の寄贈などを通じて以前から交流があったことがきっかけとなり、学生時代に通った地域を懐かしむとともに芦安地区に対して感謝の気持ちを表そうと整備を決めた。
同館によると、整備したルートは夜叉神峠の南方に位置する桧尾峠(標高1639メートル)から南アルプス林道(夜叉神~広河原)の夜叉神トンネル東端に延びる樹林帯の約1.3キロ。同会の60、70代メンバー約15人とNPO法人芦安ファンクラブのメンバーらが6月から作業を始め、斜面が崩れたり材木が朽ちたりしている箇所を修復。材木を運び上げての階段作りや土止めの整備などを行い、10月下旬に道が完成した。
これまで夜叉神峠に登山する際は、同じ道を往復するしかなかったが、今回の整備で夜叉神峠周辺の登山道を一周できるようになった。
作業に携わった同会の本間浩さん(71)=神奈川県横浜市=は「昔からお世話になっている芦安地区に恩返しができてよかった。多くの人に足を運んでもらえたらうれしい」と話す。
同NPOの清水准一さん(62)は「失われつつあった道を再生してもらいありがたく思う。夜叉神峠周辺からは鳳凰三山が一望できるので、登山者には周遊ルートとして楽しんでもらいたい」と話す。同館の塩沢久仙館長は「道がつながったことで、高谷山まで足を延ばし、コースを一周する登山者も増えると思う。芦安を訪れる観光客の増加にも期待したい」と話している。
【写真】木材などを使って急斜面に道を整備するメンバー=南アルプス市芦安芦倉
(2012年11月28日付 山梨日日新聞)