2024.8.24 News /

〈8〉広河原山荘の活用拡充

登山客に宿泊者カードの記入を呼びかける所一成支配人(右)=南アルプス・広河原

環境教育の新拠点構築

 「宿泊者カードに記入をお願いします」。登山客でにぎわう南アルプス市芦安芦倉の広河原山荘。支配人の所一成さん(58)がピーク時には10人以上が列をなす受付で登山客に説明した。

 広河原山荘は2022年に移転オープン。日本で2番目に高い北岳の広河原登山口に位置する。市観光施設課によると、登山の拠点となってきた同山荘は移転前には年間平均約1600人が宿泊。昨年は中高年の登山ブームを背景に約1850人に増加した。所さんは「国内だけでなく欧州やアジア圏からも登山者が訪れる」と話す。

 一方、北岳山荘など山中にある他の山荘では稼働率がほぼ100%になるが、広河原山荘は60~70%で推移。市は「宿泊スペースにはまだ余裕があり、別の目的で呼び込む必要がある」とし、登山以外での活用を模索している。

 広河原山荘は南アルプスエコパークの「核心」「緩衝」両地域の境目に位置する。同課の担当者は「広河原は車で行ける一番近い核心地域。珍しい動植物を見ることができ、林間学校にはうってつけ」と期待を寄せる。

 市は昨年9月、広河原で市内の中学生約20人を対象に環境教育のモニターツアーを実施。生徒たちは1泊2日の行程でカツラの原生林を散策したほか、倒木をのこぎりで切る体験などをした。

 ただ、広河原に向かう夜叉神峠からの県営林道はマイカー規制区間で、通行許可を得られる車両は路線バスを除くと10人乗りまで。複数台の車両が必要になるため一般的な林間学校よりも費用がかかる。大雨時には土砂流入で通行止めになることも多く、「安全性の確保や安定的な催行に課題がある」(同課担当者)のが現状だ。

 市は今秋、旅行会社3社を対象にした林間学校のモニターツアーを企画。行程や費用面などについて意見をもらい、環境教育の新拠点としての可能性を探っていく考えだ。

【広河原山荘】 旧芦安村が1985年、登山客増加のため野呂川右岸に建設。老朽化に伴い、南アルプス市は左岸の野呂川広河原インフォメーションセンター南東に移設し、2022年6月から供用を始めた。鉄筋コンクリート3階建てで収容人数は101人。宿泊室は大部屋のほか、家族連れなどで利用できる4~5人用の個室が6部屋ある。

(山梨日日新聞 2024年8月24日掲載)

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