2024.8.10 News /

〈7〉北杜の企業 地域と連携

市の水資源やサントリーの取り組む保全活動を紹介する同社の担当者=北杜・泉中

共生へ豊かな水守る

 「定期的な伐採や調査をして、天然水を生み出す森づくりをしています」。7月中旬、北杜市の泉中で、サントリーの担当者が水資源の保全について説明した。

 同市白州町鳥原で「サントリー天然水南アルプス白州工場」などを運営する同社は、2003年に保全活動「天然水の森」をスタート。同市など南アルプス地域の森約2千ヘクタールで地形調査や間伐などをしている。19年には、市南アルプスユネスコエコパーク地域連絡会が登録5年を記念して発行した冊子の編集に携わるなど、エコパークの周知へ地域とも連携してきた。

 工場のある鳥原地区は、自然を生かしながら人が生活を営む「移行地域」に属する。担当者は「エコパークと同様、工場は『地域との共生』を重視している。一企業として、貴重な天然水を生み出す土地を守りたい」と話す。

 同市は昨年度、市内で水保全活動に取り組むサントリーやアルソア慧央グループ、萌木の村など7企業と協力し、高校生が水について学ぶプロジェクトを始動。活動を次代につなげる取り組みをしている。

 水資源の保全とともに、活用の取り組みはエコパーク登録を契機に各自治体に広がった。同市は15年、地元企業などと協定を結び、北杜の水をブランド化して発信する「世界に誇る『水の山』宣言」をした。

 市は観光や移住定住促進イベントなどでも「水」を前面に出してPR活動を展開している。23年の市ふるさと納税返礼品では、市内に工場がある企業の飲料水が寄付額の3割を占めた。

 市商工・食農課の福田和久課長は「水ブランドが確立され、工場などの誘致につながった」と成果を強調。「市を盛り上げるだけでなく、財産として保全する取り組みも強化していきたい」と話す。大自然の恩恵を守り、営みに生かしていく。

【北杜市の水資源】 甲斐駒ケ岳や八ケ岳、茅ケ岳などに囲まれている北杜市は水資源が豊富で、「名水百選」の尾白川、「平成の名水百選」の金峰山、瑞牆山源流などがある。甲斐駒ケ岳の花こう岩層を通った軟水が採取できる同市白州町地区には、飲料メーカーの工場などが進出している。

(山梨日日新聞 2024年8月10日掲載)

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