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山梨県考古学協会の設立45周年を記念して開かれた講演会=ベルクラシック甲府
山梨県考古学協会(新津健会長)は設立45年に合わせ、甲府市内で記念講演会を開いた。「山梨の考古学最前線3」と題し、3人の研究者が山梨ならでは遺跡の概要やその活用について発表した。 帝京大文化財研究所の櫛原功一さんは縄文時代中期、長野県と山梨県一帯を含め、広範囲に分布した曽利式土器や、その影響を受けた曽利式系土器について取り上げた。また、竪穴住居形態と比較し、土器形式に対応した住居形式があることや、土器形式圏ごとに竪穴建築に関する設計仕様や拡大パターンがあったことを報告した。 山梨県立考古博物館の一之瀬敬一さんは近年、原産地推定が進む水晶に関する研究成果を発表。古墳時代、県産の水晶で作られた玉類が宮城県から東海地方にまで分布し、畿内王権を介さずに東日本で生産と流通が行われていたことなどを紹介した。 南アルプス市教育委員会の斎藤秀樹さんは、山梨県の堤防遺跡の調査や研究史を総括。今年、史跡整備が完了した御勅使川旧堤防(南アルプス市)の石積出や将棋頭などの歴史や構造を説明し、「山梨県が積み上げてきた治水と利水の情報はこれからを考える上で大きなキーワード。洪水や干ばつに備える上で考古学の情報が生きてくる」と話した。
(山梨日日新聞 2024年8月15日掲載)