2024.7.27 News /

〈5〉糸静線の断層露頭 活用狙う

糸魚川-静岡構造線の断層が露出した「新倉の断層露頭」。町は観光資源化を目指している=早川町新倉

学術的な価値 どう周知

 「どれだろう」。7月中旬、糸魚川-静岡構造線(糸静線)の断層が露出した「新倉の断層露頭」(早川町新倉)。妻と訪れた静岡県在住の男性は、露出した断層の境界を探して目をこらした。構造について示す案内図はなく、川を隔ててそびえる露頭には木や草が生い茂っていた。

 日本列島中央部を横断する糸静線。新倉の断層露頭は糸静線の構造が顕著に表れているとして、2001年8月に国の天然記念物に指定された。全域が南アルプスユネスコエコパークに登録されている同町内には、西山地区や赤沢地区にも露頭が点在している。

 同町では主に西山地区の温泉や秋の紅葉などを観光資源にしてきた。14年のエコパーク登録を好機と捉え糸静線をPRしようと、昨年、露頭を新たな観光資源として活用することを目的としたプロジェクトをスタート。事務局を担う日本上流文化圏研究所(同町薬袋)の笠井一雄事務局長は「町内観光の目玉にできるような仕掛けを考えていきたい」と意気込む。

 町関係者は町内の露頭をはじめ、同じく糸静線の断層露頭の観光地化を進めている新潟県糸魚川市を視察。案内板の設置や見学場所の整備、ガイドマップ作成などを検討している。笠井事務局長は当面の課題について、「まずは周知が重要。見学できる環境の整備とともに、学術的価値についてどう理解してもらうかが大切だ」と話す。

 プロジェクトの一環として、6月には町役場で講演会を開催。山梨県立大の輿水達司客員教授は断層の存在について、「南アルプスの成り立ちを地質学的にひもとく上で非常に重要だ」と訴えた。南アルプスだけでなく、列島の形成史に触れることができる県内随一の自然環境。集まる視線は熱い。

【糸魚川-静岡構造線断層帯】 日本列島を横切る大規模な断層。新潟県糸魚川市から静岡市までの約250キロに上り、地質構造上、東北日本と西南日本を分ける。全てが大規模な地震を引き起こす活断層ではなく、長野県白馬村付近から富士川町付近までが地震を引き起こす可能性がある活断層帯とされている。

(山梨日日新聞 2024年7月27日掲載)

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