〈4〉オオキンケイギク生息域拡大
■コロナ禍 駆除の妨げに
「1年でこんなに増えるのか」。5月、北杜市地球温暖化対策・クリーンエネルギー推進協議会(グリーン北杜)の篠原充会長は、北杜・大武川の河川敷で特定外来生物「オオキンケイギク」を引き抜きながらため息をついた。
南アルプスエコパーク内にある大武川など釜無川流域は、人が暮らして持続可能な地域社会の発展を目指す「移行地域」に属する。国土交通省甲府河川国道事務所によると、同流域でのオオキンケイギクの生息面積は、2006年からの5年間で2倍超に増加。14年のエコパーク登録以降も拡大し続け、21年には富士川水系全体で約150ヘクタールに上った。
特定外来生物の組織的な駆除としては、16年のグリーン北杜の活動を皮切りに早川町や韮崎市に広がった。一時、「花はかなり減った」(篠原会長)が、新型コロナウイルス禍による活動休止などで再び生息範囲を広げているという。
県内の外来生物などを調べている県富士山科学研究所主幹研究員の安田泰輔さんによると、富士山周辺では標高約千メートル付近で生育しているのが確認されている。安田さんは「日当たりや気温など環境が整えば、南アルプスでも標高が高い場所で広がる可能性がある」とし、「地域間で駆除の方向性を共有するほか、駆除の手が回らない地域を他地域がフォローすることも重要だ」と指摘する。
グリーン北杜は現在、北杜市内のオオキンケイギクの繁茂状態を把握するため、生息マップの作成を進めている。「放っておけば瞬く間に広がることがこの10年で分かった。駆除の必要性についての周知と作業を地道にするしかない」(篠原会長)。終わりの見えない闘いが続く。
【オオキンケイギク】 北米原産の多年草でコスモスに似た黄色い花を咲かせる。繁殖力が強く、在来種の生育を脅かす危険性がある。2006年に特定外来生物に指定され、法律で栽培や譲渡が禁止されている。駆除の際は根元から引き抜き、ごみ袋などに密閉して燃えるごみとして処理する必要がある。
(山梨日日新聞 2024年7月20日掲載)