〈3〉エコパ伊奈ケ湖で環境教育
「生きた教材」多世代に
「エコパークは自然と人がずっと一緒に暮らしていける地域です」。6月上旬、南アルプス市上市之瀬の「エコパ伊奈ケ湖」を訪れた白根飯野小の4年生36人に、若手スタッフが声をかけた。児童たちは南伊奈ケ湖周辺の自然について学ぶクイズラリーに臨み、「切り株はなぜ切られているのか」「クロモジの葉は何のにおいがするのか」などの設問に、目を輝かせながら取り組んだ。
2014年のエコパーク登録を受け、県は17年、自然環境教育を実践する中心的な施設として資料館などを市に委譲。市は18年にエコパ伊奈ケ湖としてリニューアルオープンした。動植物の観察、木の実を使った工作など、日帰りから宿泊で取り組むプログラムは多彩で、緒方光明所長(36)は「自然を守る意識を持ってもらい、郷土愛も育んでいきたい」と狙いを話す。
児童を対象とした学習活動として、市は21年、全15小学校などでエコパークについて学ぶ授業を導入。南アルプスエコパークの定義や、「核心」「緩衝」「移行」の3地域に区分されていることなどを教え、エコパ伊奈ケ湖も活用している。
一方で、エコパークの理念を後世につなげていくため、緒方所長は「子ども以外の世代に浸透させていくことが課題。大人の理解を得ることは不可欠」と指摘。「エコパ伊奈ケ湖の存在についてもっと知ってもらう必要がある」と話す。
市などはエコパ伊奈ケ湖などに親しんでもらおうと、18年から親子による自然観察会、移住者を対象にしたたき火イベントなどを実施している。「幅広い年代に訪れてもらいたい。それがエコパークの理念を伝えていくきっかけになる」(緒方所長)。恵まれた環境での体験を「生きた教材」として広めていく。
【エコパ伊奈ケ湖】 櫛形山中腹の登山口に位置し、宿泊棟や研修室、キャンプ場、コテージなどを備える。周辺にはエメラルドグリーンの湖面が広がる北伊奈ケ湖、南伊奈ケ湖の二つの湖があり、秋の南伊奈ケ湖ではイロハモミジやカエデなどの紅葉が楽しめる。
(山梨日日新聞 2024年7月13日掲載)