〈2〉早川のジビエ 販路拡大
収益性確保 保全の一歩
「くせが少なくて肉本来のうま味が味わえますよ」。6月上旬、早川町草塩でジビエ(野生鳥獣肉)の生産、販売を手がける「早川ジビエYAMATO(やまと)」の店内。運営会社社長で猟師の望月秀樹さん(57)が、冷凍ケースに入った商品を手にしながら来店客に薦めた。
YAMATOは、南アルプスが国連教育科学文化機関(ユネスコ)のエコパークに登録された2014年、町が開設した。望月さんらが仕留めた動物の解体からパック詰め、急速冷凍まで1時間ほどでできる設備を整えているほか、レストランと売店を併設している。
売店ではニホンジカやクマ、イノシシの肉を販売。オープン翌年の15年度に645万円だった売り上げは、23年度には1023万円に増えた。22年にはペット用ジャーキーを開発するなど活用策の拡大を図っていて、望月さんは「豊かな自然の中で育ったジビエの味や食の安全を求める人が購入してくれるようになった」と話す。
ジビエの普及が進む一方、町内で捕獲されるニホンジカの数は目標に達していない。町振興課によると、農作物や木の食害を防ぐため、ニホンジカは県の管理捕獲の対象になっている。同町では23年度の捕獲数は135頭と定められていたが、実際は90頭にとどまっている。
町内にいる猟師は23年度29人で、14年度より3人減った。望月さんは「猟師は決してもうかる仕事ではない」と、担い手と捕獲頭数が増えない要因について話し、「猟には危険が伴う。収益性の確保は必要だ」と強調する。
望月さんの家は代々狩猟で生計を立ててきた。「工夫を凝らして、より魅力的なジビエ商品作りや販路拡大に力を入れていく必要がある。狩猟文化を守り、環境を保全していくことにも結びつくはずだ」。これからの「自然との共生」を模索している。
(山梨日日新聞 2024年7月6日掲載)