2024.6.29 News /

〈1〉甘利山のレンゲツツジ群落

甘利山に自生するレンゲツツジ周辺の下草を刈る「甘利山倶楽部」のメンバー=韮崎・甘利山

花咲く環境維持 地道に

 南アルプスが国連教育科学文化機関(ユネスコ)のエコパークに登録されて今月で10年を迎えた。登録後の歩みや課題などを探る。

 韮崎市の南西に位置する甘利山の山頂付近。自生する約15万株のレンゲツツジは今シーズンの見頃を終え、勢いを増した下草が生い茂る。「来年もきれいに咲いてくれるといいんだけど」。26日、甘利山の自然保護活動などに取り組むNPO法人「甘利山倶楽部」副理事の小林兵武さん(87)は、鎌で下草を刈りながら汗を拭った。

 山頂付近では5月下旬~6月上旬、レンゲツツジの群落が一斉に赤い花を咲かせる。倶楽部によると、1990年ごろまでは麓の住民が山でミヤコザサを刈り、肥料として畑にまいていたが、化学肥料の普及で刈る頻度が減少。山頂付近ではササがツツジを覆い、日光を遮るようになった。登山などで以前から訪れていた市内の70代女性は「最盛期に比べ、一時は花がだいぶ減った」と振り返る。

 貴重な群落を守ろうと、韮崎市の住民らが04年、自然保護グループとして倶楽部を設立。ササを刈ったり、山頂の植物をシカから守るために防護ネットを取り付けたりする活動を展開してきた。

 エコパーク登録から10年。回復傾向にあった花の数は「少雨や遅霜など、その年の天候によって少なくなる時もある」(小林さん)というが、こまめな手入れを続け、株数を維持してきた。

 この10年で、活動の中心を担ってきた倶楽部メンバーのほとんどが70歳を超えた。活動を着実に引き継いでいこうと、今年から若手メンバーである40代の会員を役員に迎え入れた。「活動を若い世代に広げ、次の世代につないでいきたい」。山頂に赤い花が広がる次の10年、20年を目指し、地道に活動を続ける。

【甘利山】 標高1731メートル。エコパークの緩衝地域に位置する。標高約1640メートルにある駐車場から徒歩15分ほどで山頂にたどり着くことができ、多くの登山客でにぎわう。レンゲツツジのほか、「県レッドデータブック」に記載されている「ヒメイズイ」「オオヤマサギソウ」なども見ることができる。

(山梨日日新聞 2024年6月29日掲載)

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