【なぜなにQ】エコパーク登録10年 南ア地域に効果は?
エコパークという言葉を聞いたことはありますか。世界では、2023年6月現在、134カ国748地域が「エコパーク」として国連教育科学文化機関(ユネスコ)に登録されています。国内では10地域あり、山梨県内が含まれるのは南アルプスと、甲武信ケ岳とその周辺地域の二つです。このうち山梨、静岡、長野の3県10市町村にまたがる南アルプスは今年の6月で登録10周年を迎えます。エコパークに登録されたことで南アルプス地域にどのような効果があったのでしょうか。
■自然と共生へ 学び、実践
「ユネスコエコパークとは、人が自然を守りながら自然を学び、一緒に生きる地域のことです」。南アルプス市観光推進課でエコパーク担当を務める望月皓平さん(32)が教えてくれました。
南アルプスは2014年6月、エコパークに登録されました。エコパークでは、生態系を守りながら、自然と人間社会が共生することを目的にしたさまざまな取り組みが進められます。自然に学びながら、文化的にも、経済・社会的にも持続できるような発展を目指しています。
エコパークは「核心地域」「緩衝地域」「移行地域」の三つの地域からなります。「核心地域」は自然環境を守らなければいけない大切な地域。「緩衝地域」は環境教育や野外活動、調査研究活動、観光やレジャーに利用します。人が暮らしを営んでいるのが「移行地域」です。
南アルプス市の場合、核心地域は北岳から広河原、移行地域は市芦安山岳館から東の方の住宅街、緩衝地域は二つの地域の間になります。
市内の全15小学校では環境教育や野外活動に力を入れています。緩衝地域である北伊奈ケ湖・南伊奈ケ湖周辺ではセンサーカメラを取り付けて動物を観察したり、林間学校をして自然に触れあったりしています。
望月さんは「市民一人一人が保全に向けて実践できるような仕組みをつくりたいです」と目標を掲げます。
エコパークに含まれる山梨、長野、静岡の10市町村の自治体職員は2カ月に1回、「南アルプス自然環境保全活用連携協議会」を開いて意見を交わしています。南アルプスでは、シカの食害やライチョウの保護などが問題となっていて、「自治体の大きさや環境は異なりますが、自然を守ろうという思いは同じです。情報を共有して役立てています」(望月さん)とのことです。
ユネスコエコパークは、富士山が登録されている「世界遺産」ほど認知度は高くありません。そのため多くの人に知ってもらうことが課題です。南アルプス市では、市立美術館で登録から10年間の取り組みを紹介したり、市芦安山岳館でエコパークにちなんだ展覧会を開いたりする予定です。
望月さんは「南アルプスを現状のまま保全できるように、皆さんが自然に興味を持ってもらいたいです」と話しています。
(山梨日日新聞 2024年4月25日掲載)