国立公園の歩道5割無管理 県関係 荒廃進み、防災に課題
山梨県と隣接都県にまたがる富士箱根伊豆、秩父多摩甲斐、南アルプスの3国立公園で、登山道や遊歩道の計201路線のうち、半数超の109路線が管理者不在となっていることが環境省の調査で分かった。環境省は、古くに修行者や山小屋関係者らが整備した後、管理者が定まらず、荒廃したケースが多いとみている。国立公園であるにもかかわらず、管理者不在で荒廃が進む登山道が各地にあることや、災害時に迅速な対応ができないなどの課題が浮き彫りとなった。
環境省は昨夏に実態把握に乗り出し、各公園の管理方針を定めた「公園計画」に明記された全ての登山道や遊歩道計1127路線を調査。今年3月に報告書をまとめた。全国規模の詳細な実態把握が行われたのは初。共同通信が情報公開請求し入手した内部報告書で明らかになった。
県関係3公園のうち、登山道・遊歩道の数が最も多いのは「富士箱根伊豆」(山梨、東京、神奈川、静岡)の計95路線。うち50路線(52・6%)はいずれも全区間で管理者がいなかった。一部の区間で管理者がいないのは25路線(26・3%)、全区間に管理者がいるのは20路線(21・1%)にとどまった。
「秩父多摩甲斐」(山梨、埼玉、東京、長野)は全84路線のうち、全区間で管理者が不在なのは49路線(58・3%)。一部区間で不在なのは15路線(17・9%)、全区間に管理者がいるのは20路線(23・8%)だった。「南アルプス」(山梨、長野、静岡)は、全22路線のうち10路線(45・5%)が全区間で管理者不在だった。
環境省によると、国立公園の登山道や遊歩道は通常、区間ごとに国や都道府県、市町村、企業が管理。一方で、管理者が決まっていない区間も数多く存在し、荒廃が進行している。県関係3公園を管轄する関東地方環境事務所によると、管内にある管理者不在区間の多くは、かつて信仰登山者や山小屋関係の人らが整備したと思われるという。
環境省は荒廃によって見通しが悪くなるなどし、道に迷う登山者が増えることを懸念。雨で土が浸食された場合は、転倒の危険性が増すほか、元々の植生や景観を破壊する恐れがあるという。無秩序な状態のまま、登山道や人工物などが設けられる恐れもある。
これらの課題解決に臨むため、環境省は今後、不在区間に管理者を定めるなどし、国立公園事業として適切に維持管理を継続できる体制を目指すこととしている。
(山梨日日新聞 2023年11月27日掲載)