2023.7.16 News / 登山 /

【安全な夏山登山】あわや遭難 その時何が

南ア・栗沢山 靴壊れ、水も飲み干し…

 甲斐市の会社員男性(41)は南アルプス山系の栗沢山(標高2714メートル)をグループで登山中に両脚がつって歩けなくなった経験がある。「一緒に登っていた人の助けで無事に下山できたが、あやうく遭難するところだった」と語る男性。男性の体験を振り返るとともに、男性の許可を得て県警山岳警備安全対策隊に助言を聞いた。
 栗沢山は北沢峠を起点に複数のコースがあり、男性はシンガー・ソングライターの宇多田ヒカルさんが出演するCMの撮影現場となった橋や岩場のあるコースを選択。コースタイムは2時間40分ほどで、途中の峠から山頂まで険しい岩場が続く。
 歩き始めて登山靴のつま先がはがれかかっていることに気付いた。「4年前に購入し使うのは2度目。見た目に問題なく、まさか壊れるとは思わなかった」。急斜面の岩場で息が切れ、後ろを歩いていた人に追い越される。「皆に追いつこうと必死だった」。脚を大きく上げて岩場を登るうちに、両脚がつった。
 持ってきた水は500ミリリットルのペットボトル1本。頂上に着いたときには飲み干していた。同行者に水を分けてもらったが、脚はつったままで「立つのもつらかった」(男性)という。大きくはがれた靴の裏は外し、樹林帯のコースを下ることにした。
 同行者が荷物を預かり、付き添いをしてくれた。「木に巻かれた赤いテープが見えたが、倒木もあり、疲れのせいか道が合っているか不安になった」。脚が治らないまま、引きずりながら下山した。
 男性は「小学生も学校行事で登ると聞き、大丈夫だろうという慢心があった。山は非日常の世界。事前準備を怠らず、自分の体力を知っておく必要を感じた」と話した。

(山梨日日新聞 2023年7月14日掲載)

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