南アの希少種保護重点
環境省方針、国立公園の計画見直し
環境省は来年度、山梨、長野、静岡3県にまたがる南アルプス国立公園について、指定区域のほか、希少動植物の保存に向けた保護規制などの全面見直しに着手する方針を決めた。動植物の分布や地形などを数年間かけて詳しく調べ、公園計画を改定する。計画全体の見直しは1964年の国立公園指定以来、初めて。
同省は2020年度の当初予算案に6800万円の事業費を計上し、南アルプス国立公園の公園計画の見直しに向けた調査費用を盛り込んだ。
調査では、国立公園のエリアを示す区域線のほか、動植物の分布や地形、地質の現状を調べる予定で、期間は2~3年になる見通し。計画の見直しには、公園内の希少な動植物を保護する観点とともに、公園利用者を増やして観光振興につなげる目的もあり、今後の公園利用の在り方も検討するという。
南アルプス国立公園の総面積は3万5752ヘクタール。半分以上の1万8286ヘクタールが県内エリアで、北杜、韮崎、南アルプス、早川の4市町が含まれている。14年6月には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の生物圏保存地域(エコパーク)に登録。ライチョウなど希少な野生動物が生息し、キタダケソウ、チョウノスケソウなどの高山植物が自生する。希少種の保存を見据えた見直しになるとみられる。
計画の見直しには地元自治体や住民らとの協議、調整などが必要。同省は「計画の変更までには、少なくとも4~5年がかかる」としている。
同省は全国の国立・国定公園の公園計画の見直しを進めている。昨年1月には群馬、新潟、長野3県にまたがる上信越高原国立公園(志賀高原地域)の公園計画を改定。大半を占めていた普通地域を自然環境の保護規制がより厳しい特別地域に指定した。
山梨が含まれる国立公園では、1996年に富士箱根伊豆国立公園(富士山地域)の公園計画を全体的に見直した。2000年には秩父多摩国立公園の計画を見直し、秩父多摩甲斐国立公園に名称を変更した。
(山梨日日新聞 2020年1月18日掲載)