山岳写真家白簱史朗さん死去
国内外の名峰活写
国内外の名峰に登り、雄大な山容や植物を活写してきた山岳写真家の白簱史朗(しらはた・しろう)さんが11月30日午後10時30分、肺炎、腎不全のため静岡県伊豆の国市長岡の順天堂大付属静岡病院で死去した。86歳。大月市出身。
1933年生まれ。18歳の時に写真家・岡田紅陽に師事し、山岳写真の修業に励んだ。62年に山岳写真家として独立を宣言。アフガニスタンをはじめ、インド、パキスタン、カナダ、ヨーロッパなど国内外で撮影を続け、山岳写真を中心に自然風物や風景写真を発表した。75年には山岳写真の会「白い峰」を結成し、山岳写真の普及啓発にも尽くした。県内でも最近まで写真展が開かれていた。
NPO法人日本高山植物保護協会会長、国立公園協会理事などを歴任。77年に「わが南アルプス」「尾瀬」「富士山」で日本写真協会賞を、87年に山梨県文化功労者表彰、山人会特別賞前田晁文化賞を、90年に野口賞を受賞した。著書に、写真集「日本南アルプス」「富士山」(いずれも山梨日日新聞社刊)など多数。
陛下と山岳談議楽しむ
天皇陛下が山への関心を深められたのは、白簱史朗さんの山岳写真がきっかけともいわれる。大学院生時代の1986年に県立美術館での白簱さんの企画展を訪れた陛下は、白簱さんの「カラー南アルプス」の初版本を差し出し、サインを求めたという。皇太子時代に東宮御所に招かれ、山岳談議を楽しんだこともあった。
世界の名峰ヒマラヤ、カラコルム、ロッキーなど雄大で神秘的な大自然の写真を撮り続けた白簱さんだが、山岳写真家としての出発点とも呼べる存在が、南アルプスだった。
2018年には南アルプス芦安山岳館で「南アルプス 白簱史朗の世界と『白い峰』写真展」(南アルプス市主催、山梨日日新聞社、山梨放送共催)を開催。「その大きさ、高さに一瞬で心を捉えられてしまった」と、半世紀以上にわたって数え切れないほど足を運んだ南アルプスの魅力を語った。
(山梨日日新聞 2019年12月3日掲載)