2019.8.16 News /

南アの希少植物、後世へ

「ホザキツキヌキソウ」シカ食害で自生数株 県森林研、全滅回避策探る

 日本では南アルプスの山系にだけ自生する絶滅危惧種のスイカズラ科の植物「ホザキツキヌキソウ」を増殖させる技術研究に、山梨県森林総合研究所(富士川町最勝寺、田辺幹雄所長)が取り組んでいる。シカの食害などで個体数が激減し、数株しか自生していないとされる。同研究所などは試験管を使った増殖に取り組むほか、外部機関で冷凍保存するなど絶滅の回避に向けた取り組みを進めている。

 同研究所や県みどり自然課によると、ホザキツキヌキソウは中国に分布しているが、国内では南アルプスの山系の特定の山にだけ自生する。国と県のレッドデータブックでは、ごく近い将来に野生種絶滅の危険性が極めて高い「絶滅危惧1A類」に分類。近年はシカの食害などで個体数は激減していて、県の調査では現在自生するのは数株だという。

 研究所は県の許可を得て種を採取。現在は植物ホルモンや肥料などを含んだ液体「培地」を入れた試験管内で、発芽するか実験を進めている。発芽した場合、植物から新芽を採取して増殖させる技術の確立を目指す。一方、同課は種を外部機関で冷凍保存するなどして、絶滅回避に向けた取り組みも並行して進めている。

 同研究所の西川浩己主任研究員は「始まったばかりの研究で分からないことが多い」としつつ、「日本では山梨県内でしか自生していない希少な植物を増殖させる技術を確立させ、希少種を後世に残したい」と意気込む。増殖に成功した場合、将来的にはホザキツキヌキソウが自生するエリアに移植することも想定しているという。

 (山梨日日新聞 2019年8月16日掲載)

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