夜貯水、昼利用でピーク発電対応 野呂川に地下調整池計画

 山梨県企業局は16日、南アルプス市芦安の県営野呂川発電所(早川水系)の導水路に地下調整池の建設を計画していることを明らかにした。電力消費の少ない夜間に河川水を地下調整池に貯水し、消費量の多い昼間時にこの水を利用して発電するもので、電力需要に合わせた発電(ピーク発電)に対応する。

 企業局によると、水量調整によるピーク発電は広瀬ダム、西山ダムでも導入しているが、地下調整池を設けるのは全国でも初めてのケースという。建設が実現すれば電気事業の最大出力の約90%でピーク発電が可能となり、企業局は「火力発電所の運転抑制につながる地球温暖化対策にも貢献できる」としている。

 野呂川発電所には、河川水取水後から発電までに水量調整する設備はない。今回の計画は、ためることができない電気エネルギーを水という形で蓄え、必要な時に利用することで、電力の商品価値を高めるのが狙い。現在はダム方式により、最大出力の約45%でピーク発電に対応している。

 計画によると、地下調整池は、河川水の取水えん堤と発電所の水槽を結ぶ導水路に併設する。導水路の上流と下流の2カ所にゲートを設け、昼夜の開閉によって調整池に貯水したり、発電向けの水量補給に使ったりする。貯水量は最大で10万立方メートル、事業期間は来年度から2009年度を想定している。

 企業局は、電力需要が増加している昼間時間帯(午前9時-午後3時)に、最大2万3900キロワット(一般家庭約8千戸分相当)の電力を上乗せして供給できるほか、火力発電所の運転抑制で1年間に約2万1000トンの二酸化炭素排出の抑制につながる、などのメリットを強調している。

 企業局は来年度、国立公園の特別地域内にある計画地の環境調査や、工事で発生する土砂の処理調査などを行い、建設が可能か見極める。総事業費は現時点で国庫補助を含め36億円程度を見込んでいる。

【写真】地下調整池計画のイメージ図

(2004年3月17日付 山梨日日新聞)

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