2004.6.17 News / その他 /

富士山噴気は木材の発酵 業者が不法に埋設 県「火山活動と無関係」

 昨年9月に富士山の東北東斜面(山梨県側)の標高1530メートル付近で見つかった地面の陥没と、ごく弱い噴気について、県は5日、現地掘削調査の結果から「地中に埋設された木材などが発酵、発熱し噴気が発生したためで、火山活動とは無関係」と発表した。木材は県発注の林道整備工事の請負業者が伐採木などを不法に投棄したもので、県は業者に原状回復勧告を出すなどの措置を取った。周辺自治体や住民の不安を招いた事態に、業者の監督責任がある県は「結果的に公共工事が原因で世間を騒がせ、迷惑を掛けた」と陳謝した。

 県消防防災課、治山林道課などによると、現地では大小17地点で陥没が見つかり、このうち4地点から、ごく弱い噴気が確認されていた。県は2月24日に、国の富士山ハザードマップ検討委員会メンバーの宮地直道日本大助教授らと2つの陥没地点(噴気があった地点となかった地点)などを掘削調査した。

 5メートルほど掘削した結果、いずれも土砂とともに多数の木材が埋設された形跡があった。人工的に切断された木材も見つかった。また木材周辺の地温は30-35度と高く、たい積物から遠ざかるにつれ10度近くまでに下がった。このため宮地助教授らは「埋設された木材が適度な水分、温度、生物条件が重なって発酵、発熱した」と結論付けた。

 一方、問題の工事は県富士北麓・東部地域振興局吉田林務環境部が発注した林道開設工事で、工期は2001年11月-02年10月。請け負った共進建設(南都留郡山中湖村山中、高村権児社長)が、凍結した路面に土砂を敷く目的で林道近くを掘削。埋め戻す際に、付近にあった倒木や古木を土砂とともに埋めていた。

 県は今月4日、廃棄物処理法違反(処理基準違反)として、同社に木材の除去や陥没の埋め立てなど原状回復を勧告。届け出せずに県有林野を無断で掘削したことについて始末書の提出も求めた。同社は8日から原状回復のための工事に着手する意向を示しているという。同社は1995年まで高村権一県議が社長を務めていた。

 5日に会見した若林一明県治山林道課長は「山梨や日本のシンボルである富士山のふもとで公共工事が原因で世間を騒がせ、県民や関係者に多大な迷惑をかけたことを深くおわびする」と述べ、今後同社の指名停止などの処分も検討する考えを明らかにした。

 気象庁火山課の山里平火山対策官は「結果的にお騒がせしたが、火山活動ではなくほっとした」と話している。

 富士山斜面で見つかった噴気が火山活動と無関係と分かった5日、富士北ろく地域の住民には安どの表情が広がった。一方、木材などの不法投棄が原因だったことに、県の監督責任を追及する声や、投棄した業者に対し厳しい行政処分を求める声も出ている。

 富士吉田市の萱沼俊夫市長は「噴気が火山性のものでなく安心したが、地元は富士山の火山活動に神経質になっている。不適切な処理で多くの住民に不安を与えたことは大変残念に思う」と話した。

 一方、同市内の男性(46)は「人騒がせな話だ。県は業者をどのように監督していたのか、きちんと説明してほしい」と厳しい口調。「ずさんな行為で住民の不安をあおったという面では鳥インフルエンザ問題と一緒。県は業者に厳しい処分を下すべきだ」と言う。

 また山中湖畔で貸しボートなどの観光業を営む高村輝彦さん(37)は「原因が分かり、ほっとした。だが『富士山を世界遺産にしよう』と盛り上げを図ってきた県が、今回の問題に工事発注者として絡んでいたとなると、何ともいえない気持ちになる。(不法投棄などの行為で)富士山や観光のイメージダウンにならなければいいが…」と話していた。

(2004年3月6日付 山梨日日新聞)

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