【南アルプス臨時支局】登山日記・大パノラマに足取り軽く
南アルプス臨時支局初日の16日、北岳を目指して入山した。濃い緑に囲まれた景色、「バットレス」と呼ばれる東壁の荒々しい姿、稜線りょうせんから見渡すスケール感…。北岳の登山は20回以上になるが、何度登っても、あらためてその素晴らしさを感じることができ、愛着のある山の一つだ。
今回の登山で最も心配していたのは天候。だが、心配とは裏腹に強い日差しが降り注ぎ、樹林帯では汗だくになって歩いた。稜線ではガスに覆われたり、強風に見舞われたりすることもあったが、幸いにも大半は好天に恵まれ、無事に取材を終えた。
北岳に続く稜線では、甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳、鳳凰三山、富士山など日本を代表する名峰を望むことができた。思わずカメラを構えたくなるような大パノラマに、足取りも軽くなった。足元に目を移すと、シナノキンバイやハクサンイチゲといった多くの高山植物が咲き誇り、心を和ませてくれた。ハイマツ帯や岩場を動き回るイワヒバリの愛くるしい姿にも目を奪われた。
今年は、南アルプスにとって「ユネスコエコパーク元年」の記念すべき年。これを機に、あらためて身近に国立公園の大自然があることに感謝し、人と自然との共生について考える必要があると感じた。後世に貴重な動植物が生息する自然豊かな山脈を受け継いでいくために。
2014年7月23日付 山梨日日新聞掲載