2017.11.05 News /

紅葉期の山岳遭難防げ 早い日没 ライト、防寒具は…  最悪ペース、県警警戒

 山梨県内で10月末までに発生した山岳遭難は135件で、過去最悪だった昨年同期を上回るペースで推移している。10月以降は防寒具やライトを携帯しないなど準備不足が原因とみられるケースが目立つ。紅葉シーズンを迎えて入山者が増える中、県警は夏山と比べて日没が早く、気温が一気に低下するなど遭難のリスクが高まると警戒。万全の準備を呼び掛け、年間ワースト記録の更新を防ぐ構えだ。

 県警地域課によると、今年10月末までの遭難件数は135件で昨年同期と比べて5件増、遭難者は146人で同8人増。いずれも統計を取り始めた1965年以降で最多だった昨年を上回る。死者は24人で昨年より5人増えた。

 同課によると、秋季は春・夏季と比べて日没が早く気温も低いため、ライトや防寒具など装備の充実が欠かせない。標高の高い山は積雪や登山道の凍結が始まり、状況に応じてアイゼンなどの装備も必要になるという。

 4日午前9時ごろ、JR大月駅で下車した東京都内の60代女性3人は、「肌寒いね」と顔を見合わせた。11月下旬に仲間10人での日帰り登山を控え、大月市内の菊花山(標高643.7メートル)の下見に訪れた。日没時間や山中の気温なども確認し、登山計画を練るという。

 県内は10月以降、登山者が道に迷い、日没で下山できなくなって遭難するケースが相次いでいる。

 11月3日午後6時50分ごろには、大月市内の山中で道に迷った東京都内の60、70代の女性5人が日没のため下山が困難になったとして救助を要請。同10時半ごろに大月署員や同市消防署員らが救助した。同日午後5時10分ごろにも、日没のため山中湖村と忍野村の境にある大平山から下山できなくなった都内の男性大学院生(25)と男性会社員(24)が救助を求め、富士吉田署員に救助された。男性2人はヘッドライトなど照明器具を携帯していなかった。

 県山岳連盟の秋山教之会長は「夏山に比べて行動できる時間は短く、甘い認識や経験の少なさが大きな事故を招く」と指摘。体力や技術の過信も遭難につながるとして「改めて余裕をもった行動を心掛けてほしい」と話す。

 今年の遭難件数を山系別に見ると、南アルプスが最多で72件、大菩薩・道志が22件、秩父が21件、御坂が10件、富士山が7件、八ケ岳が3件。昨年の発生時期をみると、全149件のうち9~11月が3割強の47件に上った。

 同課の細田茂樹次席は、県内に秋以降も登山しやすい低山が多いと指摘。「遭難者は標高が低い山を甘く見た装備不十分が見受けられ、体力に合わない登山計画もある。季節に合った装備で慎重に計画を立ててほしい」と話している。

 (山梨日日新聞 2017年11月5日付)

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