2012.10.12 News / 自然文化 / 動物・鳥 /

オオカミ復活させ食害防止 シカ捕食へ協会が“輸入”構想 山梨含む3県で重点活動

 食害防止へオオカミ復活を-。シカやイノシシなどの野生鳥獣による農林業の食害を防ごうと、日本オオカミ協会(会長・丸山直樹東京農工大名誉教授)が、日本で絶滅したオオカミを外国から“輸入”し、シカなどを捕食させる構想の実現を目指している。人を襲うイメージが持たれがちなオオカミだが、「外国では人に危害を加えた例はほとんどない」と同協会。今年は山梨など3県を活動の重点県と位置付け、構想への賛同者を増やす計画で、14日には南アルプス市内で集会を開く。

 日本オオカミ協会は1993年に発足し、全国の会員数は約330人。協会は「農林業の食害の拡大は、明治時代にオオカミが絶滅し、生態系のバランスが崩れたことに第一の原因がある」と主張。「オオカミを復活させれば、自然生態系の再生と保護が図れる」と訴え、今年4月には約9万4千人の署名を添え、国に復活を要望した。

 協会は将来的に中国やロシアなどからオオカミを日本に“輸入”し、野生化させることを目指す。協会によると、シカなどの鳥獣を捕食することに加え、シカなどがオオカミに襲われる恐怖心を抱くことで、雌の繁殖活動が抑制され適正頭数に近付くという。

 オオカミの復活には、人が襲われることへの懸念もあがるとみられるが、丸山会長は「オオカミが人を襲うイメージは童話の影響が大きいが、実際はほとんど報告がない。欧州の多くの国では、オオカミと人は共生している」と説明する。

 協会は今年、食害の被害が深刻な山梨、長野、静岡の3県で、会員拡大などを進めている。14日には南アルプス・櫛形生涯学習センターあやめホールで集会を開き、会員以外の一般住民にもオオカミの復活について理解を求める。

 一方、食害防止へオオカミの導入効果を疑問視する声も。環境省南アルプス自然保護官事務所の中村仁自然保護官は「オオカミの導入で、ほかの生態系に影響を及ぼす可能性があり、オオカミが人里に現れ、人や家畜に被害が出ることも考えられる」と指摘している。

 (山梨日日新聞 2012年10月12日付)

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