南アの高山植物守りたい 自然保護官補佐・甲斐の24歳奮闘
「登山者に美しい景色を」

 12日にエコパーク登録10年を迎えた南アルプス。甲斐市富竹新田の海藤愛結さん(24)は環境省自然保護官補佐(アクティブ・レンジャー、AR)として、キタダケソウなど希少な高山植物の保全に取り組んでいる。笛吹高で植物研究部に所属し、地元の自然保護に携わりたいと大学卒業後の2022年にARとなった。高山植物の保護をはじめ、ニホンジカの食害対策、環境保全の普及啓発などに当たっている。「南アルプスの希少な高山植物を保全し、美しい景色を登山者に見てほしい」と話している。

 毎年5~8月になると、小型のハンマーやセンサーカメラなどの資材を入れた約10キロのリュックを背負い、片道5~6時間ほど、北岳や仙丈ケ岳などの登山道を歩く。キタダケソウやシナノキンバイなどの高山植物が登山者に踏み荒らされたり、動物に食べられたりしていないか登山道脇を注意深く観察するという。1回の調査が3泊4日になる時もある。「ARになる前、登山はほとんどしていなかったが、今は生物や植物を見るのが楽しい」と笑顔を見せる。
 甲斐市出身の海藤さんは幼少期から自然に興味があり、笛吹高時代は植物研究部に所属。地元で自然に関わる仕事に就きたいと考え、帝京科学大を卒業した22年春に環境省南アルプス自然保護官事務所のARになった。自然保護官(レンジャー)の藤田和也さん、生態系保全等専門員の粟村観月さん(26)らとともに、山梨、長野、静岡の3県にまたがる南アルプス国立公園の動植物保護などをしている。
 業務で多くのウエートを占めるのがキタダケソウの保全だ。キタダケソウは1994年、絶滅の恐れがあり捕獲や譲渡が禁止される「国内希少野生動植物種」(希少種)に指定され、北岳山頂部の生息地38・5ヘクタールは保護区となった。海藤さんは5~8月にかけて30回以上、山に入り、保護区を巡回してキタダケソウの管理状況を確認する。登山者が植物を足で踏まないように設置する植生保護ロープが老朽化していないかなども点検するという。
 ニホンジカの食害対策にも携わる。北岳では近年、ニホンジカがシナノキンバイなどの高山植物を食い荒らすことにより、花畑がなくなる被害が出ている。海藤さんはシカの侵入を防ぐ柵や、捕獲用のわなを設置しているという。「北岳にはキタダケソウのほか、タカネマンテマやタカネビランジなど、希少な植物がある。学術的にも重要な植物を守らないといけない」と意気込む。
 エコパーク登録以降は、南アルプス市内の小中学校で出前授業の講師を務めてきた。北岳の植生や地形、防鹿柵設置の取り組みなどを児童生徒に教えている。「地元の人たちにこそ南アルプスの自然について知ってもらい、環境保全を意識してほしい」

(山梨日日新聞 2024年6月12日掲載)

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