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県山岳連盟初代会長の大沢伊三郎さん(1898-1996年)が生前収集した山岳書587冊が、南アルプス市芦安山岳館に親族から寄贈された。同館の図書室内で「大沢伊三郎文庫」として一般に公開されている。日本登山の近代化を担った登山家が明治-昭和初期に刊行した古書が数多くあり、日本の登山史をひもとく上で貴重な資料。山岳館は「図書室の価値が高まった。資料の散逸を防げた点でも意義深い」と喜んでいる。 大沢さんは、昨年甲府市若松町から南アルプス市上宮地に移転した「太冠酒造」の前会長。同連盟会長や日本山岳会山梨支部長などを歴任した。登山史研究では県内の第一人者で、収集資料は山岳書に加え、美術や写真、民俗関係など多方面。戦災で多くが焼失したが、戦後に収集を再開し何万点もの資料を残した。 寄贈したのは長男の妻・百代さん(68)。会社と自宅を昨年移転した際に整理した資料を「公共のために役立ててもらおう」と考え、伊三郎さんと親交があった県山岳連盟名誉会長の高室陽二郎さん(78)が仲介した。 山岳館や高室さんによると、日本山岳会創設者の小島烏水や木暮理太郎ら日本の近代登山をリードした登山家の著書をはじめ、江戸末期から現代までの日本登山史の研究に役立つ資料。1938年に限定100セットしか発行されなかった木暮の「山の憶(おも)ひ出 上・下巻」といった希少本もある。 山岳館は大沢文庫として書棚を設置。このほど、高室さんと同館を訪れた百代さんは「皆さんの役に立てば義父も喜ぶでしょう」と語った。山岳館の塩沢久仙館長は「文献を守ってきた大沢家に感謝し、県民の宝として残していきたい」と話している。 【写真】塩沢久仙館長から大沢文庫の説明を受ける高室陽二郎さんと大沢百代さん(右から)=南アルプス市芦安山岳館 (2008年2月9日付 山梨日日新聞)