山岳遭難、GoToで急増?
県内11月25件発生、昨年の3倍超 県警、緊急街頭指導へ
山梨県内で10月以降、山岳遭難が増加傾向にあるとして、県警が注意を呼び掛けている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、4月以降の月別遭難発生件数は前年を下回り続けていたが、10月は前年と同数となり、11月は前年の3倍を超えた。10、11月の遭難者は7割が東京都と神奈川県の在住者。10月から政府の観光支援事業「Go To トラベル」の対象に東京発着旅行が追加され、人の流れが活発になったことや、好天が続いたことが影響した可能性がある。遭難者の急増を受け、県警は緊急の街頭指導などを計画している。
県警地域課によると、今年の山岳遭難件数(11月23日現在)は99件で前年より58件少なく、4~9月は前年をそれぞれ5~19件下回った。しかし10月以降、遭難件数が増えて10月は19件と前年に並び、11月は25件で前年の7件を大きく超え、過去10年で最多となった。
10月以降の遭難者61人のうち、東京都、神奈川県の在住者は41人と約7割を占めた。県警は「Go To トラベル」の対象に東京発着が追加された10月以降、暖かく晴れた日が多く、人の活動が活発化し、都心からアクセスしやすい県内への登山者が増加し、遭難の増加につながった可能性があるとみている。
遭難の態様別では道迷いが14件と最多で、事前の計画不足やヘッドライトなどの不備が主な原因だという。同課は「秋は落ち葉などで登山道が分かりにくくなっていて、道迷いにつながった可能性がある」とみる。
県山岳連盟によると、10月以降、瑞牆山や金峰山、日向山、大菩薩嶺などの登山者が増加。同連盟顧問の古屋寿隆さんは「標高2千メートル級の比較的に登りやすい山に登山者が殺到している」と話す。人気アニメ「鬼滅の刃」のゆかりの地として雲取山に登山する若者も目立ち始めたといい、中には作品のキャラクターにちなんで法被を着て登るファンの姿も。古屋さんは「冬山シーズンを控え、ひとたび天候が崩れれば気温の低下やみぞれなど危険が増すことを認識してほしい」と話す。
山岳遭難の急増を受け、県警は28、29の両日、JR中央線沿いの駅前や登山口、富士山吉田口登山道で緊急の登山指導を行う。計約50人の警察官が各地で装備品の点検や登山届の提出を呼び掛ける。
県警の荒居敏也生活安全部長は26日の会見で、低い山での日帰り登山でも遭難のリスクがあるとして「『油断をしない』『事前準備』『複数人での登山』を特に意識してもらいたい」と話した。
(山梨日日新聞 2020年11月27日掲載)