コロナ禍、異例の夏山シーズンに
山小屋休業、遭難を警戒 県警「救助もリスク高い」
富士山で全登山道が閉鎖され、南アルプスで公営の山小屋が営業を見合わせるなど、新型コロナウイルスの影響を受けた異例の夏山シーズンを前に、山梨県警が山岳遭難に警戒を強めている。山小屋で働く協力者の支援を得られず、活動拠点が確保できないため、例年よりも厳しい救助活動が見込まれるという。県警は富士山への登山自粛のほか、ほかの山では登山届を提出した計画的な登山を強く呼び掛けている。
23日、鳳凰三山・薬師岳の登山道で、南アルプス署の山岳遭難救助隊員6人がヘルメットやロープなど約15キロの装備品を担ぎ、危険箇所を確認した。「山小屋が営業し、多くの登山客がいる例年とは違う。現場の状況把握はより難しくなる」。同署の上田悠紀子地域課長はこう話す。
例年は山小屋に遭難情報が多く寄せられ、管理人に現場を確認してもらうなど救助活動で全面的な協力を受けている。だが、感染拡大を受けて、今年の夏山シーズンは南アルプス山系の南アルプス市営の山小屋5施設が営業を中止。民間運営の北岳山頂近くの「肩の小屋」も営業は未定という。
八ケ岳も北杜市側の4つの山小屋のうち、営業は1カ所のみの予定。八ケ岳の青年小屋経営者で県警山岳遭難救助アドバイザーを務める男性は、富士山の登山道閉鎖を踏まえ「八ケ岳や甲斐駒ケ岳の登山客は増えるだろう」と予想。営業する山小屋が少ないため、「弾丸登山やテント泊が多くなるのでは」と指摘し「外出自粛期間が長引いたことで、登山客の体力低下も気になる」と話す。
富士山は全登山道が閉鎖され、全ての山小屋が休業。県などは5合目の登山道入り口にバリケードを設け、監視員が入山しないよう呼び掛ける予定だが、富士山は山域が広く、全ての登山者の入山を防げるかは未知数だ。
県警の大窪雅彦本部長は25日の定例会見で富士山について「今夏は例年より危険な環境。富士山には絶対に登らないようお願いしたい」と強調。荒居敏也生活安全部長は富士山以外の山に関し「登山のリスクも、救助のリスクも高まる。山小屋の開設状況などを確認し、登山計画書を提出して安全な登山をしてもらいたい」と呼び掛けた。
(山梨日日新聞 2020年6月26日掲載)