シカ食害対策へ専門員
環境省事務所 南ア高山帯で食害防ぐ
南アルプス市芦安芦倉の環境省・南アルプス自然保護官事務所に、本年度からシカの食害対策専門員が配置された。同事務所が管理する南アルプスでは標高3千メートルの高山帯までシカが出没。貴重な高山植物やライチョウのすみかとなる草木に対する食害が深刻化しているため対策を強化する。
自然保護官事務所は2008年に開設。山梨、長野、静岡の3県にまたがる南アルプス国立公園の動植物の保護や開発行為に対する許可や指導などを行っている。
昨年度までは自然保護官と同補佐の2人体制だったが、4月から生態系保全等専門員の金丸太一さん(甲府市出身)が着任し、3人体制に増強された。
同事務所によると、南アルプスでは温暖化や雪の減少、猟師の高齢化などの要因が重なり、シカが高山帯まで行動範囲を拡大。キタダケソウやタカネマンテマなどの貴重な高山植物の食害が確認され、絶滅が危惧されるライチョウの生息数の減少にもつながっているという。
金丸さんは大学で環境学を学んだ後、北海道の自治体や民間コンサルタントで鳥獣害の研究、対策に携わった。今後は経験を生かし、シカの生態調査を進め有識者や地域住民らと連携して対策を進める。
金丸さんは、3千メートルを超える高山帯の南アルプスは「日本で最も対策が難しい」といい、「シカの被害にも地域差がある。しっかり勉強してシカとの知恵比べを頑張りたい」と話している。
一方、本年度着任した7代目の自然保護官・雨宮俊さんと、4年目の同補佐・本堂舞華さんはいずれも南アルプス市出身。金丸さんを含め3人とも県内出身者となり、雨宮さんは「山を中心とした地域づくりを頑張りたい」と意気込んでいる。
(山梨日日新聞 2020年4月28日掲載)