北岳ライチョウ60羽増
保護活動で生息3.5倍 環境省5年間推計
環境省は11日、国の特別天然記念物で絶滅危惧種のニホンライチョウの増殖を目指して南アルプス・北岳で一時的に保護するなどの取り組み結果をまとめ、発表した。生息数(推計値)は本年度までの5年間で約60羽増え、取り組み開始当初の3.5倍に回復した。同省は「取り組みの有効性が確認された」と説明している。
環境省によると、北岳がある南アルプス白根三山地域のライチョウの縄張りは、統計が残る1981年に63カ所あったが、2014年には8カ所まで減少した。
15年から北岳の北岳山荘周辺で、ライチョウのひなと親鳥を一時的にケージで保護し成長後に放鳥する取り組みを開始。17年からは保護と合わせ、ライチョウを補食するテンやキツネの捕獲を始めた。
取り組みの結果、15年に9カ所だった縄張りは本年の調査で32カ所を確認。生息数(推計値)は約23羽から約80羽に増え、1981年当時の半分にまで回復した。
ケージ保護し、成長後に放鳥したライチョウの分散状況の調査では、2017年に放鳥したライチョウが南アルプス南部の赤石岳まで移動したことを確認。同省は「北岳での取り組みが、南アルプス全域の生息数の回復につながっていることが示唆された」としている。
北岳での取り組みは本年度で終了するが、天敵の捕獲については継続して実施できるか検討する。一方で中央アルプスのライチョウを復活させる取り組みとして今後、北アルプスに生息する約20羽を捕獲し、中央アルプスに放鳥する予定。南アルプスで成果があったケージ保護などを生かす考えだ。
(山梨日日新聞 2019年10月12日掲載)