多い残雪、遭難最悪ペース
県内 死者11人、昨年同期の2倍
県警、夏山控え注意呼び掛け
今年1~5月の山梨県内の山岳遭難者数が過去最多ペースで推移し、死亡者は昨年より6人多い11人に上ることが18日、県警への取材で分かった。山岳関係者によると、今年は春山の残雪が多く、経験や技術に見合わない登山で遭難するケースが多かったとみられるという。県は昨年10月から登山計画書の届け出を努力義務化したが、提出は遭難者の26%にとどまる。県警は本格的な夏山シーズンを前に警戒を強めており、「登山計画書が義務付けられたことを周知するとともに、技量に合った登山を呼び掛けたい」としている。
県警地域課によると、2019年の遭難者数は5月末現在で53人。昨年と1965年の統計開始以降最多だった17年をそれぞれ7人(15.2%)上回った。死亡者は昨年より6人多い11人。過去最多だった17年の12人に迫る。重軽傷者は21人で、昨年より8人(61.5%)、17年より5人(31.3%)多かった。
山系別に見ると、最も多かったのは南アルプス山系の13件で28.9%を占めた。大菩薩・道志と秩父山系がいずれも12件、御坂山系が6件などと続いた。年代別では、10代と20代がいずれも2人だったのに対し、60代以降は23人、50代も8人と、中高年以上の遭難者が目立った。
県山岳遭難対策協議会南アルプス支部の清水准一副支部長は「今年は4、5月の春山で残雪が多く、技術や経験が不足している登山者が遭難するケースが多かった」と指摘。「最近は装備は一人前であっても、力不足のまま個人で入山し、軽々に救助要請する人が目立つ」と話す。
5月には東京都の20代男性が軽装備で富士山に入山し、県警に救助を要請。富士吉田署員や県警山岳警備安全対策隊員が5時間以上にわたって捜索したが、男性は自力で下山していた。同署は後日、男性を署に呼んで厳重注意した。県警の担当者は「あまりにも安全意識が低い」と漏らす。
県は「県登山の安全の確保に関する条例」を公布し、昨年10月から富士山、八ケ岳、南アルプスの3区域に立ち入る場合の登山届提出を努力義務とした。ただ、昨年10月~今年5月末に発生した遭難69件のうち、提出は18件(26.1%)。前年同時期の5件(8.2%)から向上したものの、同課は「まだまだ少ない。遭難者の大半が県外者。情報発信が課題だ」としている。
県警は過去最多の遭難者が発生した17年以降、東京都内で登山計画書の提出を呼び掛ける啓発イベントを開いたり、県警ホームページに山頂の残雪状況の空撮画像を公開するなどして遭難対策を強化している。同課は夏山シーズンに向け、「多くの登山客が入山し、遭難が増えることが予想される。事前準備や体調管理を万全にして慎重な登山をしてほしい」と呼び掛けている。
(山梨日日新聞 2019年6月19日掲載)