ライチョウ、縄張り回復
南アルプス山系 18年、保護策実り8→24ヵ所
絶滅危惧種のライチョウが生息する南アルプスの北岳などのエリアで、8カ所まで減少していたライチョウの縄張りが2018年に3倍の24カ所まで回復していたことが分かった。東京都内で10日に開かれた環境省の「ライチョウ保護増殖検討会」で報告された。外敵から守る「一時保護」とライチョウの天敵の捕獲への取り組みが功を奏したとみられ、同省は「大きな成果」としている。
検討会は有識者らで構成。環境省などは15年から、生息数の減少が著しかった北岳などがある南アルプス白根三山北部地域で、ライチョウのひなと親鳥をケージで保護する取り組みを行っている。18年には、一時保護したひなが成長し、繁殖に成功したことも確認された。
17年には、ライチョウを捕食するテンやキツネの捕獲を開始。2年間でテンを15頭捕獲するなどした結果、放鳥から2カ月後のライチョウの生存率は捕獲前の12.5%から、17年は93.8%に上昇。18年は73・3%だった。
1981年に63カ所あった縄張り数は2014年に8カ所まで減少し、「地域絶滅に近い状況」(同省)だった。24カ所まで増えたことについて、同省の担当者は「右肩上がりで回復し、成果が出ている」と説明した。
一時保護と天敵の捕獲は来年度まで実施。一時保護したひなが生息している場所や南アルプス全域の繁殖への影響などを調べ、有効性などを確認して今後の増殖につなげる。
検討会では、全国5カ所の動物園で飼育されているライチョウについて18年度中を目標に一般公開する計画が示され、了承された。展示用の広い施設での飼育が今後の野生復帰に有効という。市民のライチョウへの関心を高める狙いもある。
また、野生復帰に向けた技術開発の試験を中央アルプス・木曽駒ケ岳で実施する方針も決めた。木曽駒ケ岳のライチョウは絶滅したとされていたが、昨夏、約50年ぶりに雌1羽の生息を確認。この雌の巣にある無精卵と飛来元とみられる乗鞍岳のライチョウの有精卵を入れ替えてふ化を試みるほか、地域絶滅した要因なども調べる。
(山梨日日新聞 2019年1月12日付)