夏山遭難1カ月余で12件

県内死者3人昨季と並ぶ 北岳で男性大けが

 夏山シーズン(7、8月)に入り、山梨県内で山岳遭難事故が続発している。4日は南アルプス市の北岳でアルバイト男性が滑落し、顔の骨を折るなどの大けが。北杜市白州町の甲斐駒ケ岳では行方不明の会社員男性の捜索が始まったが、見つかっていない。県警地域課によると、7月1日から8月4日までの発生件数は12件で、前年同期(9件)を上回るハイペース。死者数は1カ月余りで3人と、既に昨年7、8月の犠牲者数と並んでいる。県警は事故防止に向け、登山者に体力や技術に合った山選びなどを呼び掛けている。

 南アルプス署によると、北岳で重傷を負ったのは東京都のアルバイトの男性(67)。4日午前7時ごろ、八本歯付近を単独で下山中、ハチに刺されたことに驚き約4メートル滑落。付近を通りかかった登山者が発見して近くの山小屋に連絡。県防災ヘリ「あかふじ」が救助し、甲府市内の病院に搬送した。

 また長坂署は4日、登山仲間から届けが出ている横浜市の会社員男性(44)の捜索を約30人態勢で開始。一方、この日、7合目付近の登山者から「登山道の30メートルがけ下に人が倒れている」との目撃情報が寄せられ、5日に再度、横浜の会社員男性かどうかを含めて確認することにした。

 県内では7月15日、富士山で登山中に胸の痛みを訴えた千葉県の会社員男性(54)が病死したほか、同25日に南巨摩郡早川町の行田山で無職男性(71)が、また29日には笊ケ岳で大阪府警の男性警察官(50)が、それぞれ遺体で見つかるなど、既に3件の遭難死亡事故が起きている。

 県警地域課によると、今年上半期(1-6月)の山岳遭難件数は33件、遭難者は39人で、昨年同期に比べ15件、19人と2倍近く増加。夏山シーズンに入ってからも、今月4日までで12件と前年同期を3件上回っている。

 中高年の登山ブームも影響し、今年上半期の遭難者のうち約8割は40歳以上の中高年者。7月以降の遭難者も、12人のうち11人を中高年者が占めている。

 遭難理由は病死や滑落などさまざまで、同課は「気象判断の誤りや装備不足、基本的な山の知識を欠いたことによる遭難が多い。遭難した場合でも早期発見によって被害を最小限に食い止めるため、単独登山は避けてもらいたい」と呼び掛けている。

【写真】南アルプス山系を目指して出発する登山客。県内では夏山シーズン中の山岳遭難が相次ぎ、県警が注意を呼び掛けている=南アルプス・広河原

(2005年8月5日付 山梨日日新聞社)

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