マイカー規制元年 バス利用3万人超す 「自然と共生」手応え 南ア林道 早川ルート対応課題

 南アルプスの登山拠点・広河原とふもとを結ぶ南アルプス林道で、初めて行われたマイカー規制が冬期閉鎖とともに先月末で終わった。昨シーズンの通行止めの“後遺症”もあって山小屋宿泊者数などは伸び悩んだものの、登山者や地元の観光関係者は「自然保護のためなら」と、規制をおおむね容認。継続的な実施を求める声も強まっている。一方、南巨摩郡早川町側からは規制中もマイカーで乗り入れができ、「環境保全」という規制趣旨から課題を残した。「マイカー規制元年」を振り返る。

 「規制が原因で登山客が大きく減ることはなかった。通行止めを契機に、自然を守りながら利用する方向に転換できたのではないか」。南アの自然保護と南アルプス市芦安地区の活性化に取り組む「芦安ファンクラブ」の花岡利幸代表(山梨大大学院教授)は評価する。

 市によると、6-9月の北岳山荘の宿泊客は6133人。通行止めだった昨年と比べると大幅に増えたが、一昨年に比べ約3割減。「開通が1カ月遅れたことや、PR期間が短かったことが影響した」(市商工観光課)としており、こうしたことがなければ例年並みに回復したとみられている。 

駐車場に余裕

 マイカー規制は、富士山有料道路で1993年から夏山シーズンに10日間前後行われてきたが、シーズン通しての実施は県内では初めて。

 7月17日から10月31日までの期間中、芦安地区の駐車場から広河原行きのバスを利用したのは約1万1千人。JR甲府駅からの便を合わせると、バス利用者は3万1千人余りに上った。市によると、駐車場は延べ約6400台が利用。最も混雑した7月18日には全駐車場(629台分)の8割以上が埋まったが、駐車場が足りなくなるような事態はなかった。

 ただバスの運行をめぐっては「満員で乗れず、1時間後の便まで待たされた」などの不満の声が市などに寄せられることがあったという。

 「環境保全を考えれば片方だけの規制では中途半端だ」。規制期間中も早川町側の県道南アルプス公園線からはマイカーで広河原に乗り入れることができた。今シーズンは「通行の安全確保」が規制の主目的だったとはいえ、登山者からは不満の声も聞かれた。

 県道を管理する県峡南地域振興局身延建設部は「県道のマイカー規制は早川町からも要望されており、検討しなければならない」とした上で、「規制には全庁的な議論が必要」としていて、環境保全の趣旨からの整合性については県の判断に委ねられている。
 
登山客が滞留

 マイカー規制は、これまで通過点にすぎなかった芦安地区に、登山客を滞留させるという新たな人の流れも生んだ。「芦安を登山基地として整備し、登山の帰りに温泉や宿泊を楽しんでもらうことが大事だ」と花岡代表は指摘する。

 市は登山客の受け入れ態勢をこれまで以上に整えるため、同地区の駐車場やトイレの増設を検討。来年度は宿泊施設やビジターセンター、バスターミナルの整備を含む広河原の再整備計画の作成に入る考えだ。

 広河原山荘の塩沢久仙さんは「南アルプス国立公園の自然を守るための規制なのだから、今後は費用負担も含め環境省も巻き込んで議論を進めるべきだ」と話している。

【写真】芦安地区で広河原行きのバスに乗り換える登山客。規制への反発はほとんどなかった=南アルプス市芦安芦倉(7月)

(2004年11月14日付 山梨日日新聞)

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