高山植物/コラム



・高山植物は氷河期の植物

 名前の通り「高い山に咲く花たち」だが、かつて地球が氷河期であった時代に、平地に生育していたものが間氷期とともに北へ、あるいは高山へと生育環境にあった場所に移動して、厳しい環境の変化に懸命に耐え、順応しながら人類の世代をはるかに越えて現在まで生き続けてきた。中には氷河期の遺存植物が数多くあり、地球史を研究する上で貴重な資料になっている。北岳にはキタダケソウほか、世界中にここだけにしかないいくつかの固有種があり、高山植物の宝庫として重要な山だ。



・キタダケソウは「シラネグサ」?

 千葉園芸研究科生の清水基夫は1931(昭和6)年、ガイドの末木登久を伴って北岳山頂直下で、ハクサンイチゲとは違った白い花を発見した。「この花を知っているか?」と末木に尋ねると、「知らない草」という意味で「シラネグサだ」と答えたので、清水は「白根草」だと思っていたそうだ。北海道の「ヒガタソウ」、朝鮮半島の「ウメザキサバオノ」とも違うこの花は、中井、原両博士によって「キタダケソウ」と命名された。この花は世界中でここだけにしかなく現在、種の保存法などの法律や地元の南アルプス市によって生育地とともに守られている。



・高山植物保護へ条例制定

 高山植物保護へ山梨県が1985(昭和60)年、全国に先駆けて制定したのが「高山植物保護に関する条例」。キタダケソウ、キタダケトリカブト、タカネビランジ、タカネマンテマなど貴重な高山植物18種を指定。この背景には昭和40年後半から50年代にかけて山野草、野生ランブームが起こり、高山植物の不法採取、盗掘が相次いだことがある。条例では採取や損傷行為の禁止と、栽培と販売業者には届け出を義務付け、これらに違反すると3カ月以下の懲役または30万円以下の罰金を課している。現在の指定は22種。また94(平成6)年以降、種の保存法による希少種にキタダケソウ、アツモリソウ、ホテイアツモリが指定され、採取、譲渡が全面的に禁止となった。



・マナー守って高山植物撮影

 登山者が高山植物に対してする圧迫要因は盗掘、不法採取はもとより、踏み込みによる生育地の荒廃や登山道の拡大が大きな問題になっている。良いアングルを狙って生育地に踏み込む写真撮影者が原因のものも多く、特にラン科の植物は踏み込みによって絶滅のおそれがある。また花の咲いていない植物にも注意が必要だ。不要になったフィルムケース、箱などの投げ捨ても目立っているという。北岳の花たちは登山道からでも十分に撮影できるので、三脚の位置にも注意しマナーを守って撮影しよう。